物語
ひとりのハイカーが、東京都の最高峰を目指して歩き出す。だが一歩踏みしめるごとに、ある武将の最後の戦いにまつわる暗い伝説はただの言い伝えとは思えなくなり、下山の道は見えなくなっていく。
あらすじ
雲取山をめざす山行の二日目。Vloggerのハイカーが、歩くルートと御守り、そしてネットで読んだ話をカメラに収める。平将門、石と化した七人の影武者、そして彼らの最後の戦いを可能にした少年。やがて彼は、その石を探しに行く。そこで彼が見るものと、見た気がするだけのもの。カメラには、その区別がつかない。
詳しいあらすじ
奥多摩の山行、二日目の朝。陽気なVloggerが山小屋・三条の湯を出て、東京都の最高峰・雲取山をめざす。これから歩くルートを告げ、小さな木の御守りをカメラに見せると「ちゃんと役目を果たせるように」と胸ポケットにしまい、幽霊の絵が描かれた手描きの注意看板に笑う。やがて天気が崩れる。姿は見えないのに、すぐそばで動物の気配がする気がしてならない。
その夜、山小屋で彼は、ネットで知った話を声をひそめて語る。朝廷に背いた武将、石と化した七人の影武者、そして、彼らの最後の戦いを可能にした、ひとりの少年。翌朝、彼はふたたび歩きだす。地元の村が「将門の迷走ルート」として案内板を立てた、その道を。
ハイカー自身のカメラだけで語られ、音楽も使わないファウンド・フッテージの短編『めいそう』は、能の夢幻能のように展開しながら、やがてその型を破る。
フレームの端に、何かが現れる。あるいは、彼にはそう見えるだけなのか。伝説か、山か、それとも彼自身の心か――カメラは何も答えない。